参加者の内訳は、徳島73、兵庫54、茨城19、愛媛14、和歌山11、熊本10、香川・島根6、岡山・三重・大阪・東京5、岐阜、鳥取3、京都・山形・鹿児島・長野2、愛知・広島・高知・千葉・福井・北海道1
渡辺先生いわく、「硝酸は栄養ではない」こともないらしい。
まずは、このレーザーチャートの見方の説明する必要があるでしょう。緑色がその野菜の平均値。赤色が検体の値。この緑の平均値は検査機関である東京デリカさんの元へ集められた野菜のデータを元にしています。よって、良い野菜が集まれば、集まるほど平均値は自然と高くなることになります。
傾向として、硝酸イオンが多い野菜は、糖度もビタミンCも抗酸化力も低くなる傾向があるようです。
逆に、硝酸イオンが少なくなると、糖度もビタミンCも抗酸化力も高くなる傾向があるようです。
窒素は植物にとっては細胞をつくるために必要不可欠な栄養成分。
硝酸は、その窒素の中でも、酸化された窒素で、化学肥料の成分。
野菜栽培に化学肥料を使わなければ、野菜内の硝酸イオンの値は下がると考えらえていましたが、実際にはそうでもないようです。化学肥料をまったく使用しない有機栽培においても、栽培方法によっては、硝酸イオンが多くなってしまうことがあり、結果として栄養価が低くなることもあるようです。また逆に、硝酸イオンをぐっと低く抑える栽培技術をもっている生産農家さんでは、糖度・ビタミンC・抗酸化力をぐっと高めた野菜を安定的につくることもできるようになってきています。
硝酸イオンを抑えることができる栽培技術を知っているかいなか?また、知っていても、実際に栄養価を高めるという結果に結びつけることができているかどうか?
そこがこのコンテストの勝敗を左右しているようです。
人参部門・ホウレン草部門・トマト部門・大根部門・白菜部門・水菜部門・イチゴ部門・柑橘部門・豆類部門・カブ部門・小松菜部門・ブロッコリーカリフラワー部門・葉菜部門・果菜部門・根菜部門・加工部門の16部門で最優秀賞、そして特質すべき成績の出品について特別賞を授与しました。
毎回、激戦のニンジン。参加36点中。上位6点をノミネートします。
レーザーチャートの形に注目してください。どの形が一番、栄養価が高い野菜でしょうか?
愛媛の海野さんは2014年度の最優秀賞者。徳島の井上さんは有機栽培のベテラン農家さん。大阪の大島さんは小松島有機農業サポートセンター出身。2014年にニンジン部門特別賞・2015年はネギ部門で最優秀賞を受賞しています。
最優秀賞は愛媛の出口さん。参加36点中で一番高い抗酸化力10.7を記録しました。
もうひとつ毎年、激戦のホウレン草。参加19中。10点をノミネートします。
今年の徳島勢は、みんな硝酸イオンを低く抑えてきています。小松島有機農業サポートセンターを卒業したばかりの徳島の瀧山さん、一作目とは思えない品質です。徳島の有機栽培のベテラン遠藤さんにも負けていません。自然農法の若葉農園の横田さんも、毎年、安定した栄養価です。
これも激戦となりました。トマト。参加15点中6点をノミネートします。
ミニトマトは大玉トマトに比べ、栄養価が高くなる傾向があります。ミニトマトの1番は三重のあずんガーデンファームの加藤さん。糖度11.7・抗酸化力42.5・ビタミンCは30.2。なぜこの方に賞を出さなかったのか?それは肥後歩みの会の松村さんのミニトマトが抗酸化力57.0を記録し、大阪の大島さんも、サンマルツァーノリゼルバというミニトマトで抗酸化力47.1を記録。ミニトマトの抗酸化力は接戦です。
悩みに悩んだ末、大玉トマトの岐阜の中家さんを最優秀賞としました。
岐阜の中家さんは、技術力があり、栽培もとても丁寧、しかし、少々やりすぎるところがあり、昨年はやりすぎてしまったようで、昨年2015年の最優秀賞は徳島の井口さんでした。今年は、やりすぎないように注意しての受賞となりました。
大根部門。これも毎年、審査が難航する野菜。9点参加中、5点をノミネートしました。
糖度の一番は5.4の自然農法のベテランの和歌山の橋本さん。硝酸イオンが少ないのは大阪の大島さんで174.8。ビタミンCの一番は兵庫のパブリックキッチンさんが17.1。
大根部門において抗酸化力で唯一40を超えたのは徳島の福野さんでした。ビタミンCはパブリックキッチンさんに次いで2番目の高さ。
白菜部門は8点参加、うち3点をノミネートします。
これはもうこの方でしょう。
兵庫の山田さん。一昨年2014年度の白菜部門の最優秀賞者。昨年もノミネートされましたが抗酸化力は一番でしたが、硝酸イオンを抑えることができず、昨年は兵庫の濱野さんが受賞されました。今年は、きっちり硝酸イオンを抑えて、糖度を上げてきています。
水菜は硝酸を低く抑えることが非常に難しい野菜です。甘みのある水菜をつくるのには、それなりの栽培技術が必要になってきます。自然まかせでは、水っぽいもの、旨味のないものになってしまいがちになります。11点参加中、ノミネートは残念ながら2点。兵庫の吉岡さんが硝酸イオン1300ppmで、糖度4.8、兵庫の串光さんが硝酸イオン2600ppmで糖度4.0、それ以外の方は、6000ppmを超えておりました。
赤い水菜になったのはたまたまです。熊本の飯星さんと兵庫の池上さん。
最優秀賞は兵庫の池上さん。糖度6.9はかなり高い値です。
イチゴは11点参加でノミネートは3点。
硝酸イオンが低く、糖度が高い、この3点に絞った上で、イチゴは抗酸化力の高い野菜。
茨城県の菅谷さんは、11点中、唯一抗酸化力が300台の大台に乗りました。糖度が一番高かったのは徳島の木下さんで12.1。糖度についても菅谷さんが2位で、1位に肉薄していました。
8点参加のうち2点がノミネート。
ミカン処の愛媛勢の一騎打ちです。どちらの方も、もう他者に技術を教えることができるほどに、熟練したレベルになっています。おいしいミカンの復活のカギを握る重要な技術です。ミカン県愛媛の未来を担うお二人と思います。さて、どちらでしょう。
ミカンは品種によって糖度が大きく異なります。大谷さんの栽培する品種「甘平」は、元来、糖度が高い品種です。しかし、丹下さんの栽培する品種「石地」も糖度13を超える高糖度品種なので、品種の違いは抜きにして、土俵は同じことにします。栄養価コンテストは、検査結果の数字だけで勝負する。ガチンコ勝負です。抗酸化力68.4という高栄養価を出した大谷さんの勝ちとなりました。
5点参加のうち、2点がノミネート。
こちらは丹波の黒豆の一騎打ちです。みやがきふぁぁーむの宮垣さんと村上さん。アメリカではすでに活性酸素吸収能力(=抗酸化力)を具体的に数値で示すORAC値を表示した食品が販売されています。それによると黒豆はバナナの8倍くらいの抗酸化力がある作物として注目されているそうです。黒豆の抗酸化力はホウレン草よりもブルベーリーよりも高いといいます。黒豆は抗酸化力野菜の旗頭となっていくことが予想される作物。その黒豆の中で一番、抗酸化力の高いものを栽培したら、その人がキングオブ抗酸化力といえるでしょう。
日本有機農業普及協会の代表小祝先生が提唱する高栄養野菜をつくる栽培技術=BLOFを学ぶ農業者が多数参加しているカブ部門です。しかしながら、糖度6を超える方はおらず、糖度が一番高いのは、徳島の自然農法のベテランの横田さん5.9。硝酸イオンが一番少ないのは、徳島の阿波農産の濱田さんで、24.5。抗酸化力が最も高いのは長野のBLOFERSの新人農家さんの田中さんで25.2でした。
兵庫の岩元さんは、昨年の自分との戦いとなりました。昨年の赤カブは、糖度6.7→7.7とかなりUP、抗酸化力41.1→58.1とこれもUP、ビタミンC26.6→26.2とほぼ一緒、硝酸イオンも24.7→22.2とほぼ同じ。昨年は赤カブの特殊性からカブ部門の優秀賞でした。今年は最優秀賞です。連覇できるのは、「安定した栽培技術力の高さ」を意味していると推測します。
いったい、この小松菜に何が起こったというのでしょうか?小松菜なのにホウレン草並みの栄養価。値が間違っているのではないかと、検査機関の東京デリカに2回も確認しました。糖度の2位は7.2の兵庫の吉岡さん、抗酸化力の2位は148.4の兵庫の串光さん、ビタミンCの2位は兵庫の串光さんで72.7、硝酸イオンの2位は兵庫の吉岡さんで305.3。
2位に値として2倍近い大差をつけて、圧倒的な1位です。いったいこの小松菜に何が起こったというのでしょうか?小松菜という野菜の根本が変わってしまうようなことが起きてしまいました。兵庫のパブリックキッチンの神川さん。今後、目の離せない注目の農家さんです。
ブロッコリーは6点参加、カリフラワーは3点の参加がありました。しかし、昨年2015年の最優秀賞者の吾妻旬菜さんの記録。糖度9.3、抗酸化力86.0、ビタミンC128.0、硝酸イオンゼロを超えるものが、本年度はありませんでした。
カリフラワーには、MATS(メチルアリルトリスルフィド)という強い抗酸化作用を持つカリフラワー特有の成分があり、脳卒中や心臓病の原因となる動脈硬化や血栓ができるのを予防する働きがある。また、コレステロールが体内に吸収されるのを防ぐフィトステロールも含んでいて、カリフラワーの辛み成分であるアリルイソチオシアネートなども同様の働きをする。徳島県が生産量日本一のこの野菜。今後、抗酸化力野菜として、注目されるのではないでしょうか?
今回は、さまざまな種類の野菜が出品されました。葉菜類部門として括ってしまうと、異種格闘技戦のようになってしまいますが、①検査機関である東京デリカさんの持っている平均値データとの比較し、優秀な値のもの。また、②硝酸イオンを少なく抑え、栄養価を高くすることができているか、③検査機関東京デリカは、すべての野菜について実際に食べてみて、おいしかたのかどうかを5段階で数値化する官能試験をおこなっています。その官能試験の値を参考に審査し、4点をノミネートしました。
兵庫の池上さんの春菊の糖度6.0、抗酸化力237.5。兵庫の串光さんの春菊、糖度8.6、抗酸化力132.1。兵庫の串光さんの野沢菜の一種、姫路若菜は硝酸イオンがゼロ。糖度6.9、抗酸化力120.3。
最優秀賞は和歌山の橋本さん。チンゲン菜で、糖度6.5。そして抗酸化力は100を超えて155.9というのは驚異的です。
トマトを除く果菜類部門。ピーマン2点、パプリカ1点、オクラ1点、ナス1点、キュウリ2点、スイートコーン1点の参加がありました。
赤い野菜は抗酸化力が強い傾向がありますが、ピーマンをトマトのように赤く熟して甘くなるまで、じっくり栽培するという方法は面白いと思います。若くして収穫する青ピーマンより完熟した赤ピーマンの方が抗酸化力は高い。しかし、その値を見て驚きです。抗酸化力が300を超えるというのは驚異的です。ピーマンは果実自体に葉緑体があり、果実自体が光合成をして糖をつくっています。これは光合成能力を高める栽培技術を導入しているためのものか?すごく気になります。
ジャガイモ4点、レンコン3点、里芋2点、サツマイモ2点、山芋2点、ビーツ2点、生姜1点、ゴボウ1点の参加がありました。
これもどのような栽培方法をとったものなのか?とても気になります。なぜビーツの抗酸化力が400を超えていくのか?栄養価コンテストに毎年、話題を提供してくれている徳島の阿波農産の濱田さん。きっちり硝酸イオンを抑えて、抗酸化力を高める栽培技術を実践して、結果を出している生産農家さんです。今回のオーガニック・フェスタがバレンタイン・デーに開催されるということで、ベジタブル・スイーツをつくって配りたいというフェスタ実行委員会の要望に応えて栽培してくれたものが、このビーツです。確かに「高い抗酸化力の野菜」をお願いしましたが、まさか452という数値で答えてくれるとは驚きです。
リーフレタス3点・サニーレタス1点・サンチェ1点の5点が参加。
水耕栽培の技術で、これほどの栄養価の野菜が作れるようになってきたことは驚きです。何らかの技術革新があったものと推測されます。場合によっては露地栽培のリーフレタスよりも、糖度が高いということもありうるのではないでしょうか?また、水耕栽培なのに、硝酸イオンを500以下に抑えていることも驚きです。「土でつくる農業が、水耕栽培に栄養価で負けることはない。」とずっと思ってきましたが、これは考えを改める必要がありそうです。たいへん良い刺激になりました。
米部門は今回の2016より新設されました。多くの方のご参加、ありがとうございます。現行の検査方法では抗酸化力と糖度は測れますが、お米にビタミンCや硝酸イオンを求めても、もともと含有量が少ないため、検出できませんでした。今年の結果を踏まえて、今後、改善していきたいと考えています。
今回、最も糖度が低かった方の値が26.1。抗酸化力でもっとも低かった方の値は23.6であったので、野菜や果樹ほど劇的に値が大きく変わらないものの、数字的に優劣を求めることは可能と考えられます。次に、お米にとって抗酸化力が高いことの優位性は何か?どのような栽培をすれば抗酸化力が高まるのか?抗酸化力の高さと実際のおいしさとの関係などを分析していきたいと考えています。
第1回の最優秀者は、抗酸化力が一番高かった愛媛の溝田さんとなりました。
今回の栄養価コンテストにおいて、特別にお願いをして、農産物の加工品を出品していただきました。
日本有機農業普及協会では、どうすれば日本に有機農業が普及することができるのか?を日夜考えております。
世界で10番目の人口1億2千万人が暮らす日本は、食べる人の数が非常に多い国です。この利点を活かして、農業者は、ただただおいしいもの。栄養価の高いもの。人の健康を支えることができるしっかりした食べ物を真摯につくれば、自然と日本の農業は、それをつくれる有機農業、有機栽培になっていくのではないかと考えています。
しかし、おいしさや栄養価の高さは、季節に影響されます。夏のものは夏においしく、夏に栄養価も高い。冬のものは冬においしく、冬に栄養価も高い。旬のものにはかないません。そこで旬の時にしっかりつくり、それを長期保存ができる加工品にすることが、自然=旬を大切にする有機農業には必要不可欠なことと考えています。
有機とは、オーガニック=炭素を含んだ有機物というだけの意味ではなく、「機会(とき)有り」と読めます。その時、その時の自然のめぐみを豊かに取り出す農業ですから、旬のめぐみをしっかり封じ込めて保存し、使いたいときに使えるようにする農産物加工の技術を応援したいと考えています。旬を利用して、おいしいものをおいしい季節にたくさんつくり、おいしく食べれる状態で保存する。それができれば有機農業はますます発展するはずです。
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